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和蘭全身内外分合図

和蘭全身内外分合図

ヨハン・レムメリンの人体折畳図

長崎県歯科医師会会史第一編

 長崎のオランダ通詞本木庄太夫(良意)(1628-97)は1682年(天和2年)に西洋の人体解剖図を翻訳し『和蘭全身内外分合図』を著しました。これは日本で最初の人体解剖図の訳書です。一般には前野良沢・杉田玄白の『解体新書』が最初とされていますが(教科書など)これより90年前です。
 しかし良意の『和蘭全躯内外分合図』は出版されず稿本のままでした。良意の下に訪れた遊学の医師が稿本の写しを持ち帰り、それを1772年(明和9年)に周防の医者鈴木宗云が校正し出版しました。
 良意は出島に派遣された商館医から教えを仰ぎ、原書はドイツの解剖学者ヨハン・レムメリンの『人体折畳図』をオランダ語訳したものでした。本の内容は各内臓の形を切り抜き紙片にし、これを重ね合せて、一枚ずつめくって内部をみるようにできていました。良意も同じように作り、別冊にその一つずつ訳名をつけ解説しました。
 医者でない良意が医学用語を翻訳する苦心は大変なものでした。漢方系の医学用語はありましたが、それには全くない部位の名称や機能を理解し、邦語の訳語を創造せねばならなかったからです。良意は翻訳の以前に医学の勉強を重ね、蘭医からヨーロッパ医学を学んだ後に翻訳しました。これは主流であった中国医方と西洋医方を結びつけたもので、日本に新しい医学の礎を築く偉業を長崎の一人のオランダ通詞が成したことには深い敬意を表わさずにはいらません。